ひさしぶりにグッとくるアニメに出会ったから書く。- ヴァイオレット・エヴァーガーデン -

ヴァイオレット・エヴァーガーデンの存在はたぶんアニメ公開時くらいには知っていたんだけれど、当時はニコニコ動画で放送されないやつは視聴しないというスタイルだったから、見ていなかった。

さすが京アニで、PVですら感じ取れるこぼれ落ちるその「絵」は非常に綺麗で動きもなめらかで、宝石とか水とかの表現はもうなんかたまらないものがあったけれど、それでもまだ見ていなかった。

（ここ最近、映像作品に限らず品質の高い作品を見なくなってきた気はする。YouTubeのようなほぼ価値のない量産品でただただ時間を潰すことが増えていた節はある。今回、本作を見るきっかけとなったのも、ただただ時間を消費するだけの生き方を昔に戻したいという思いから、消費者としての時間を過ごす際もできるだけ高品質な物で消化しようという考え方からきた）

本作、超簡単に説明すると、少女兵が終戦後、手紙を代筆するお仕事をするというお話だ。




少年少女兵と聞くと使い捨ての道具であり、もはや人ではない扱いを受けているのが我々の世界であり、当然、物語の中の世界でもそのようである。
しかし、主人公の少女兵は主に非常に(人間性という意味で)大切にされ、終戦後も人間として自由に生きるための様々なサポートを受けると良いパターンだ。
詳しくは説明しない、見てくれ。Netflixで見れるぞ。

この物語の大きなテーマは「愛してる」を知るということである。
終戦間際の先頭で主が死ぬのだが、その最後の言葉に「愛してる」と言われ、この言葉の意味が本当の意味で理解できないので、代筆業を通して「愛してる」を理解しようとする少女兵が表現されている。

僕は感情の発生というものには非常に興味があるのでこの作品から感じるものがいろいろあったんだと思う。

感情とは不思議なもので、日頃から「何だこのクソ親父」なんて思っていたとしても、たぶんそのクソ親父が死ぬとひと目もはばからず僕は泣くのだろう。
一方、あんなにも想っていた人が一瞬で頭から消えるなんてこともある。
感情は本当に不思議だ。

感情は一体どこでうまれどこで消えるのか。
たとえ同じことをされたとしても誰にやられたかでも生まれる感情は大きくことなる。
感情は本当に不思議だ。

僕がこの物語を見て考えたことは、理解するために言語が必要だということ。
アメリカ人のアングリーと日本人の怒るはイコールであるが、英語がわかる人と日本語がわかる人でないとそれはイコールではない。
感情というよくわかないものを単語で命名することで、共通化を図っている。まぁ全部そうなんだけど。

で、今作のテーマは「愛してる」というワードである。「怒る」とか「悲しい」とかは多分普通に生きていればサンプル数が非常に多くあるから自身の感情と既存の単語の結びつけは比較的スムーズに行くんだろうけど、「愛してる」なんて感情なんて滅多なことじゃでてこない。特に主人公のような親の顔もしらない故事でずっと少女兵として戦っていた少女は「愛してる」なんて感情をサンプリングできる場面なんてゼロだったんじゃないかなと思う。戦場を渡り歩く上で感情を持つということは冷静さを失うということでもあるから、余計そういったものは排除すべきであるということから、なおさらである。

主人(大切な人)の最後の言葉を理解するために他人の言葉を紡ぐという行為に対し、なんかうまく説明できないけどグッときた。


僕はどちらかというと文章を書くことは好きな方で、まぁでなければ今こんな文章は書いていないと思うんだけど、手紙を書くという行為、メッセージを送信するという行為は結構好きだ。

気がついたら長文を送るという文化はほぼなくなりつつあり、親しい仲では１行程度の短文を送信しあうようなチャット文化が主流となっているが、ちゅっと寂しい感じはする。

一文字一文字文字通り紡いでいくという感じが文章を作り上げて、文章以上のなにかを生み出しているような感覚が好きだ。
思い思いに書き紡いで、最後に全体を見通して紡ぎ直すことが好きだ。
その文章を読んだ人がどんなことを考えるのか想像するのが好きだ。

チャットだとたった一行で済んでしまうかもしれないことがらが、手紙だと十倍二十倍にもなってカラフルに伝えることができる。

別にアナログな紙手紙じゃなくたっていいんだ。
チャットとはことなる別な長文メッセージを送る文化が多少は復活してくれたらうれしいな。

とまぁ ヴァイオレット・エヴァーガーデンについてはあまり書かずにここまできたけれど、ここでおしまい。